「ブランディングはなぜ必要なのだろうか」
「費用も労力もかかるブランディングには、それに見合う効果があるのだろうか」
こういった疑問を持っているあなたに向けてこの記事を書いています。
この記事では、経営を行う上で欠かすことができない差別化やリピーターの獲得、人材確保、コスト削減につながるブランディングの重要性と、例外的にブランディングが必要ない状況について、ブランディングの専門家である私たちCIRCL(サークル)が徹底的に解説します。
ブランディングの重要性
ブランドというのは、日々努力をして、素晴らしい商品やサービスを作っていれば自然と出来上がるものなのでしょうか? 実際にはそんなに単純ではありません。
また、マス広告などに巨額な投資を行う大企業だけでなく、中小企業にとってもブランディングを行うことはとても大事です。
ここでは、ブランディングがなぜ必要なのか、具体例を挙げてわかりやすく解説します。
競合との差別化のため
スーパーマーケットで商品を購入する場合、似たような2つの商品があれば、通常は安い商品を購入します。
しかし、お米を買うことを想像してください。実際に一番安いお米を買う人もいますが、多くの人は「あきたこまち」などのブランド米を少し高くても購入しているのではないでしょうか。「『あきたこまち』というブランド米なら美味しいに違いない」という顧客のブランドイメージが、他のお米より少し高くても「あきたこまち」を購入する、という意思決定につながっています。
つまり、ブランディングを行うことで競合との差別化が可能になり、その他大勢の価格競争から脱却し、価格以外の理由で自社の商品やサービスを選んでもらうことが可能になります。
ブランド差別化のための要素としては、「特徴」「成分」「技術」「サービス」「プログラム」が挙げられます。
例えば、アマゾンならワンクリックで簡単に購入できるWebサイトという特徴、「明治プロビオヨーグルトR-1」なら乳酸菌「1073R-1」という成分、ソフトバンクのロボット「Pepper」の最新技術、スーツケースのRIMOWAの5年保証というサービス、世界最大のホテルグループであるマリオットの「Marriott Bonvoy」という会員プログラムなどがあります。
このように、競合との差別化を図り、価格競争から脱却するするために、ブランディングはとても重要です。
ブランドの資産価値を高めるため
ブランドには資産価値があります。
ブランディングの第一の目標は、ブランドの資産価値を創造し、向上させ、活用することです。
そのためにまずは、マーケティングやPR・広告を通して、ブランドを認知してもらう必要性があります。消費者は知っている商品を好み、選ぼうとするからです。
消費者が商品を選ぶ際には、実際の性能や品質だけでなく、そのブランドに対する信頼性などのイメージがとても重要になります。そのため、実際に商品の品質を向上させるだけではなく、ブランディングで知覚品質を向上させることがとても大事です。
そして、ブランド連想を強化することで、膨大な選択肢の中から特定のブランドを選ぶ、顧客の意思決定を助けます。ブランド連想とは、顧客にそのブランドを連想させるもので、「シンプルでおしゃれなデザインといえばApple」「安いのに高品質な服といえばユニクロ」「デパートといえば伊勢丹」「青い箱といえばティファニー」などのことです。
ブランド連想が強化されてくると、顧客はそのブランドに対して感情移入をするようになり、ブランド・ロイヤリティを持ち、リピーターになります。このブランド・ロイヤリティは非常に強固なもので、一度獲得するとなかなか失われることがありません。あなたの周りにも、パソコンはMac、スマホはiPhoneを何年も買い替え続けている、という人がいませんか?
このように、ブランド認知や知覚品質の向上、連想の強化を図り、ブランドの資産価値を高め、ブランド・ロイヤリティやリピーターを獲得するためには、ブランディングが必要です。
優秀な人材を確保するため
正しくブランディングを行って確立されたブランドは、顧客にとって魅力的なだけではなく、従業員などの関係者にとっても魅力的です。
あなたの周りにも、バーバリーが大好きで店舗で働いている人や、Appleの製品が大好きで就職した、という人がいるのではないでしょうか?
従業員が働いているブランドに愛着を持っている場合、仕事へのモチベーションやエンゲージメントが向上し、離職率が低下します。
また、現在は売り手市場でなかなかいい人材が集まらないと困っている企業も多いですが、強力なブランドを持っている企業には、どんなに厳しい状況でも優秀な人材が集まります。
ブランド・イメージのいい企業で働くことで誇らしい気持ちになるのは、感覚的にも理解しやすいのではないでしょうか。
このように、優秀な人材を獲得し、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上を図るために、ブランディングはとても大事です。
宣伝費などのコスト削減のため
ブランディングには、それなりに費用も労力もかかるのは事実です。
しかし、長期的な目線で見た場合、ブランディングを行うことがコストの削減につながることはご存知でしょうか?
強力なブランドには、たくさんのファンやリピーターが存在します。そういった顧客は、他の商品と比較することもなく、ずっと同じブランドの商品やサービスを消費し続けます。
つまり、強力なブランドを作ってしまえば、広告宣伝費を大幅に削減できることを意味します。
例えば、日本でも大人気のスターバックスは、大きな費用がかかるテレビCMやチラシ広告などをほとんど行っていません。それにも関わらず、どこの店舗もいつも満席です。それは、スターバックスというブランドのファンがリピーターとなり、口コミやソーシャルメディアなどを通してその輪がどんどん広がっているからです。
このように、宣伝費などのコストを削減するために、ブランディングはとても重要です。
関連記事:ブランディングの正しい効果測定指標|KPIの設定方法
ブランドを作る必要のない状況
これまでにご紹介したように、基本的にはどのような会社もブランディングを行うべきですが、いくつかの例外が存在します。
ここでは、例外的にブランディングの必要性がない場合について解説します。
大企業の子会社など販売先が親会社のみの場合
大企業になると何百もの子会社を持っていることがあります。
そして、その中でもいくつかの子会社は、販売先が100パーセント親会社のみということがあります。こういった場合は、親会社は子会社のブランドに惹かれて購入を決めているわけではないので、ブランディングを行う必要性はありません。
ただし、この子会社が作っている製品を市場のターゲットに向けて販売を開始する場合は、親会社のブランドを拡張するか、新たにブランドを作る必要性があります。
流行に乗って瞬発的に稼いで廃業する場合
一時的に爆発的に売れる商品というのがいつの時代も存在します。
その流行に乗って数年で瞬発的に稼いで廃業することを決めている場合はブランディングを行う必要性はありません。
例えば、少し前に流行ったタピオカ屋さんの場合は、全く無名のお店でも、ある程度の人通りがある場所に店舗を構えれば飛ぶように商品が売れました。この場合、顧客は特定のお店やブランドの商品が買いたいのではなく、タピオカドリンクであれば何でも問題がないため、わざわざブランドを作らなくても商品を売ることができます。
通常、こういった流行は数年で廃れてしまうため、初期投資額が少なく、学習コストも低く、すぐに投資額が回収できる見込みのある場合に限られます。
ただし、その他大勢のタピオカ屋さんが数年で廃業していく中でも、Gong cha(ゴンチャ)のようにしっかりとブランディングを行っている場合は、ブームに流されることなく、流行が去っても息の長い経営を行うことができます。
他人のブランドを使う場合
強力なブランドを作るのは簡単ではありません。
そこで、フランチャイズなどのように他人が作ったブランドを使うことにより、ブランディングを行わないという選択肢も考えられます。
例えば、お弁当屋さんを新しく始める場合に、「ほっともっと」などのフランチャイズに加盟することで、既存のブランドの力を借りることができます。この場合、ブランド名を借りられるだけでなく、ノウハウの提供を受けられるなどのメリットもあります。しかし、高額なロイヤリティを支払い続ける必要性があるため、自分でブランドを作った場合と比べて、将来的には利益が圧迫されてしまう可能性があります。
長い目で見てしっかりと利益を上げていきたいと考えているのであれば、自社のブランディングを行うことを考えた方がいいでしょう。
ブランディングは長期的な利益創出に貢献する
この記事で解説したように、3つの例外を除いて、ほとんどの企業はブランディングを行う必要性があります。
ブランディングにかかるコストは決して安くはないかもしれませんが、長期的には、競合との差別化により価格競争から脱却し、ブランドの資産価値を高め、優秀な人材を確保し、宣伝費などのコストの削減につながります。
必ずしもマス広告などを行う必要性はなく、企業規模に応じたブランディングを行うことが大事です。市場で選ばれるブランドを作るために、ブランディングに取り組んでみませんか?