ブランドガイドラインはブランディングに取り組むときに必須ともいえる要素ですが、みなさんはご存じでしょうか。
ブランドガイドラインがよくわからないという方に、ブランドガイドラインとは何か、ブランドガイドラインをつくるメリットや実際のつくりかたなど、参考事例とともに紹介します。ブランドガイドラインをうまくつくれるか不安に思っている方も、この記事を読んでいただけばすぐに取り組んでいただけるよう、ブランディングを手がけるCIRCLが解説していきます。
ブランドガイドラインとは
まずはブランドガイドラインとは何か、その意味や定義、そしてブランドガイドラインを構成する要素から確認しましょう。
ブランドガイドラインの意味や定義

ブランドガイドラインとは、企業がブランドとして認知されるためにつくった行動規範や規則をまとめた説明書です。いわば、ブランディングに取り組むためのルールブックです。
ブランドガイドラインには、企業独自の理念やビジョンを言葉であらわすMI、社員の行動規範を示すBI、ロゴやデザインなど視覚的に企業を表現したVI、顧客体験を統一化したXIなどのブランドのCIについてわかりやすくまとめられています。
特にVIについては、細かくそのルールを記載します。ロゴ(ロゴの種類、カラーバリエーションなど)、シンボルマーク、ブランドカラー、サイズ、フォント、スペーシング、グリッド、展開例、禁止事項など、VIにまつわるあらゆる項目がわかりやすく指定されたガイドブックとなります。
またブランドガイドラインのなかに、社名表記についても細かく規定している企業も多くあります。例えばAndroid社の場合、社名の先頭は必ず大文字で、複数形や所有格にはできないなど、企業名の表記方法や禁止事項などについて細かく記しています。

企業によっては、外部の方と共有するためロゴの使用方法やブランドカラーなどデザインに関わるルールのみが記載されたロゴガイドラインをブランドガイドラインと呼ぶ企業もありますが、全社で共有するブランドガイドラインにはCIで定めたMIやBI、XIなどCIを構成する要素すべてが記載されていることが理想的です。なぜなら、CIは企業の独自性や特性をあらわす言葉、デザイン、統一化した顧客体験を包括的に設計した企業戦略であり、ブランドガイドラインによって全体的な戦略を理解できるようにするためです。
ブランドガイドラインの効果

ブランドガイドラインはブランディングのためのルールブックであると説明しましたが、ブランドガイドラインは本当に企業に必要なのでしょうか。ブランドガイドラインをつくるメリットを理解するため、ブランドガイドラインの主な効果を3つご紹介します。
社外との効率的なコミュニケーションを実現する
事業者がビジネスを行うなかで、取引のある代理店・小売店・ベンダーは、企業の制作物をつくってくれたり、代理として広告活動をしたり、卸した商品を販売してくれるのが社外のビジネスパートナーです。
ブランドガイドラインは、社外のビジネスパートナーに企業の独自性や特性をわかりやすく伝えてくれるガイドブックになってくれます。ブランドガイドラインがあることによって、毎回細かく口頭で伝える場を設けることなく、仕事を効率的に進めることができます。
ブランドガイドラインを社外のビジネスパートナーと共有することによって、自社への理解を深め、自社をブランドとして認知されるためのサポートをしてもらうことができます。また、オンライン・オフラインの制作物や顧客と接点をもつパートナーの行動規範などアウトプットに一貫性をもたせることができるようになります。
社内全員が同じ意識を共有し、企業活動に取り組む
ブランドガイドラインには、企業の理念やビジョン、社員が企業に期待する行動規範を含めたCIがまとめられ、これは全社員に配布されます。
新入社員のトレーニングはもちろん、毎年開催するキックオフミーティングや新しいプロジェクト発足時などの機会を活用して、ブランドガイドラインを定期的にレビューしたり、立ち返ることによって全社で同じ意識を共有し、日々の企業活動において同じ方向を目指して取り組むことを後押しします。
企業のCIは、企業がどのようなブランドとして市場から認められたいかを示しています。それがまとめられたブランドガイドラインに基づいて社員が同じように考え行動をすることによって、企業は顧客からの信頼を築き、最終的に競合企業と一線を画すブランドとして市場から認められることへとつながります。
顧客からの信頼を構築する
企業間の競争が激しいなか、販売力やサービス力が企業への信頼を築くという時代から、デジタル革新やSNSの台頭により、顧客との接点がこれまで以上に広がり、顧客との信頼関係は顧客体験をとおして構築することが不可欠な時代へと移り変わりました。
顧客との接点のなかでも、企業への印象を決める最も重要な要素のひとつが、視覚で企業を表現するVIです。デジタル化が進んだことで、HPやアプリ、SNSなどで企業の社名やロゴなど視覚的に企業に触れる機会が多くなりました。
ブランドガイドラインでは、VIをルール化してわかりやすく記載して、社内や関係各所に共有されます。そうすることで、顧客が企業との接点において常に同じイメージに触れることができるようになり、企業を瞬時に認識するようになります。
また、googleやyoutubeなど不特定多数の人が個人のブログやSNSで企業のロゴを使用する企業は、ブランドガイドラインをHPに掲載しています。ロゴの使い方を提示して、勝手な行為によってデザイン変更などがなされないよう制限をすることで、企業のイメージを守ります。
顧客が企業との接点で、毎回違った視覚的印象を持った場合、顧客は何をもってその企業を視覚的に認識すればよいか迷い、わからなくなってしまいます。これでは、企業の良い印象は損なわれてしまいます。
一貫性のあるイメージを顧客に発信し続けることで、自社の商品やサービスがどのようなものであるか瞬時に判断できるようになり、他企業や偽物や類似品との区別をつけやすくなります。これによって、顧客は企業への安心感とともに信頼感を育みます。
CIRCLのブランドガイドラインの作り方
ブランドガイドラインが何か、そして企業がブランドガイドラインをもつことのメリットを理解したところで、私たちCIRCLのブランドガイドラインの例をみながら実際にどのような手順でつくるのかをご紹介します。
1.MI→BI→VI→XIの順に企業のCIをつくりあげます。特にVIをつくるときには、細かなルールづくりをします。
2.CIをベースにわかりやすいドキュメントに落とし込みます。A4サイズで、一つの項目について1ページでデザインするとみやすいです。
CIRCLの場合

- 社名
- 目次
- About: MI(企業の理念やビジョン)

- Visual Identity
- Logo: ロゴ
- Color variations: ロゴのカラーバリエーション
- Isolation: ロゴ周りの余白やロゴの最小サイズについての指定
- Don’ts: 禁止事項
- Typography: フォント
- Colors: ブランドカラー
- Vertical Spacing: 水平方向の余白の指定
- Grid: グリッドに関する指定

- Icons: アイコンをつくるときのマージンなどを指定
- Imagery: 企業の印象に一貫性をもたせるため、制作物でつかうイメージを提示
- People: 人のイメージ
- Abstract: 抽象的なものや存在のイメージ
- Illustration: イラストのイメージ
- Mockups: 企業のウェブサイトや印刷物のイメージ
3.関係部署や企業と共有しやすいようPDFやブックレットを作成します。大企業の場合は予算があるので、パンフレットのように外注して製本されたブランドガイドラインを作成している企業もありますが、自社で印刷して製本したものでも十分です。また、近年は紙ベースだけでなく、いつでも、どこでも、だれでも見られるように、ウェブサイトで紹介する企業も多くあります。
ブランドガイドラインの参考事例
私たちCIRCLの実例をつかってブランドガイドラインの作り方を説明しました。ブランドガイドラインをつくれるよう理解を深めるために、他の企業ではどのようなブランドガイドラインがあるのか、Twitterとマイクロソフトの参考事例を解説します。
事例1 Twitter

Twitterのロゴは、企業はもちろん、エンドユーザーもHPやブログでシェアボタンなどとして活用されています。そのため、VIをメインとしたガイドラインをPDF化して、オンラインで入手できるようになっています。ひとめでわかりやすいよう、ひとつの項目につき1ページでビジュアルをメインとして説明されています。
- 使用原則
- 空白スペースと最小サイズ
- 色
- 配置
- ソーシャルアイコン
- 誤った使用例
- メインカラー
- 指定フォント
- 構造
- バリエーション
- Twitterマークの使い方
- Twitterの商標ガイドライン(法的情報)
- お問い合わせ
事例2 マイクロソフト


マイクロソフトでは、PDFではなく、公式ホームページ上で文章とビジュアルを交えて「マイクロソフト企業ロゴ使用ガイドライン」として記載しています。
マイクロソフトは、ビジネスパートナーに向けたガイドラインとなっており、より法律やライセンスに関わる部分をテキストで詳細に説明されています。
- ロゴ
- 配置
- サイズ
- 使用条件
- ロゴの誤った使用例
まとめ
ブランドガイドラインとはブランディングを行う上で欠かせないルールブックであり、主に3つの効果を企業にもたらしてくれることを解説しました。
- 社員全員が同じ意識を共有し、企業活動に取り組む
- 社外との効率的なコミュニケーションを実現する
- 顧客からの信頼を構築する
ブランドガイドラインは企業がつくりあげたCIをわかりやすく、正しく、社内とともに、取引のある事業者や一般ユーザーと共有し、ゆるぎないブランドを築いていくために不可欠です。
デザインにおける高い専門性を誇るCIRCLでは、CIの構築から包括的なブランディングまで即効性のある競争的戦略を得意としています。競合企業と差別化を図り、市場のなかで唯一無二のブランドを築くための要となるブランドガイドラインづくりをご支援いたします。ご興味ある方は、ぜひ一度CIRCLにご相談ください。
参考文献
「デジタル時代の基礎知識 ブランディング 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール」(著:山口 義宏 株式会社翔泳社)
「今より高く売る!小さな会社のブランドづくり」(著:村尾 隆介 日経BP社)
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