マインドアイデンティティ(MI)とは?
MI(マインドアイデンティティ/Mind Identity)をご存じですか?
MIは企業活動において重要な意味をもっています。ブランディングに取り組むときの大切な要素のひとつであり、ブランディングの中心部分といっても過言ではありません。
ブランディング初心者のかたにもわかりやすく、MIにはどのような意味があるか、企業がMIをつくることでどのような効果があるか、MIを構成する要素は何か、ブランディングコンサルティングをてがけるCIRCLが解説いたします。また、MIの理解を深められるよう、スターバックス、ユニクロ、NIKEの企業事例もあわせてご紹介します。
MI(マインドアイデンティティ)とは
MIの意味や定義、そしてブランディングを行うなかでどのような役割があるのかみてみましょう。
MIの意味と定義
MI(マインドアイデンティティ/Mind Identity)とは企業の理念やビジョンであり、社会のなかでのその企業の存在意義をわかりやすい言葉で表したものです。
企業がどのような考えをもち、どのように社会に貢献するためにビジネスを行っているのかを示します。そこには、企業が社会のなかでビジネスをはじめた理由や想い、企業哲学や文化、今後の方向性などが集約されています。
MIはブランディング用語としてつかわれることが多いですが、実際はブランディングを越えた企業経営やあらゆる企業活動においての軸になるものです。
マインド(mind)は「心、精神」を、アイデンティティ(Identity)は「独自性、正体」を意味します。MIは、人でいえばその人の心や精神です。心や精神にともなって、人はカラダを動かし、言葉を発します。企業での心や精神がMIです。人の行動や発言が心に反映されるのと同じように、企業ではMIを軸として経営の方針が決められ、現場での企業活動が行われます。
MIの立ち位置
ブランドとして社会に認知されるための企業活動であるブランディングは、MIで示す理念やビジョンを中心として、ブランディングの戦略を立てていきます。
ブランディングの礎となるMIをベースとして、消費者や顧客に実際の企業活動で具体的な行動へとうつすためのBI(ビヘイビアアイデンティティ)やXI(エクスペリエンスアイデンティティ)がつくられます。そしてMI、BI、XIが包括的に設計されたものがCI(コーポレートアイデンティティ)になります。
MIやVIなど他のアイデンティティを確認したい時は、こちらの記事をご覧ください。
MI(マインドアイデンティティ)の効果
MIはブランディングのもっとも中心にあります。MIがないブランディングは、方向性も一貫性もバラバラになり、結果的に時間、労力、費用を無駄に重ねることになります。ではMIはどのような効果をもたらすのか3つのポイントをみていきましょう。
軸がぶれないCIをつくる
包括的に企業の存在や個性をあらわすCIは、ブランディングの成功への鍵になります。そのCIの中心がMIです。企業の理念やビジョンすべてがわかりやすく反映されているMIがあることは、それを体現するBIやXIをつくることにつながります。そして軸がぶれないCIが設計されます。
例えば、あらゆる人に商品を届けたいことを示すMIが、親しみやすいイメージ(VI)や消費者がいつも身近に感じることができる体験(XI)に落とし込まれ、CIをつくります。
一方、こだわり抜かれた卓越した商品を届けることをMIに掲げる企業は、その商品が他と一線を画すような高級なイメージ(VI)をつくりあげ、タッチポイントにもその商品に触れる空間にも特別感を演出できるような体験(XI)を含めたCIを設計します。
つまり軸であるMIが示した方向性によって、CI全体がつくりあげられるのです。
企業活動の指針となる
MIはブランディングの要となるだけでなく、社員が企業活動をするための判断基準になります。経営戦略やプロジェクトなど大きなものから、現場での日々の仕事まで、企業活動では判断や決断を積み重ねます。迷いがでたときや、判断に困ったときにはMIに応じた選択をすることで、企業全体が向かうビジョンと同じ方向性で企業活動を行うことができます。
優秀な人材を育む
魅力ある企業には、魅力あるMIがあります。MIに共感する社員には、自社への誇りとロイヤリティが育まれます。そして企業の理念とビジョンが示され、それを実現するために日々取り組んでいる企業には優秀な人材が集まり、リクルーティングの成功につながります。
- 軸がぶれないCIをつくる
- 企業活動の指針となる
- 優秀な人材を育む
以上3つのポイントはすべて、一貫性のあるブランディングを実現し、長く成長し続ける企業になるためのMIになります。
MI(マインドアイデンティティ)の構成要素
MIは4つの要素で構成されています。ミッション、ビジョン、バリュー、スローガンです。この4つは社内で共有されますが、外部にすべてを公表する必要はありません。
4つの構成要素について、詳しくみてみましょう。
ミッション(使命・目的)
ミッションは、MIの中心です。
企業の使命や存在する目的がわかりやすい言葉で表現されています。企業がこれまでどのように社会に貢献してきたか、今後変化していく社会のなかでどのように成長を積み重ねるか、志は何かがミッションから直感的に読み取ることができることが理想です。
- なぜこの会社が存在するのか。
- 社会でどのように貢献しようとしているのか。
- 志は何か。
ビジョン(展望・見通し)
企業の向かう方向性を提示します。ミッションを軸として、企業の将来像・理想像をわかりやすく洗わします。
- 企業が何を目指しているのか。
- 今後どのように社会に貢献していくか。
- どのように成長を遂げていくか。
バリュー(価値)
企業の存在価値をあわらします。商品やサービスそのものがもたらす価値だけでなく、それ以上に社会や消費者・顧客に届ける価値は何かを伝えるものです。企業という団体と、そこで働く社員が一社会人として、社会にもたらす価値をわかりやすく示します。
- 企業と社員は社会に何をもたらしたいのか?
スローガン(標語)
企業の標語や合い言葉になるものです。キャッチコピーといわれることもあります。ミッションを連想させるわかりやすいインパクトのある言葉によって、社内の意識を統一します。
- 企業の目指すところを一言でいうと?
CIRCLのMI(マインドアイデンティティ)の作り方
CIRCLでは企業のMIに取り組むとき、まずはその企業について理解を深めるため、ヒアリング&リサーチを行います。その後方向性を検討し、クライアントとの見解をあわせたうえで、MIの4つの構成要素をつくっていきます。この3つのステップを詳しくみてみましょう。
1.ヒアリング&リサーチ
企業にヒアリングを行い、理念や哲学、歴史、創始者の想い、大切にしている価値、経営戦略、今後の展望などを伺います。 また、その企業に関するリサーチを独自で行うことで、社内とは異なる視線でCIRCLで企業の魅力を引き出します。また、マッピングツールやイメージボードなどのツールを使用することで効率的、かつ効果的に方向性を見極めます。
2.方向性の検討
ヒアリングとリサーチの結果をもとに、企業の本質的な価値・企業の存在意義、企業の理想とする将来像などについて企業とのミーティングを行い、方向性を検討・決定します。
3.4つの構成要素の作成&提案
企業とのミーティングで決定された方向性をもとに、MIを構成する4つの要素であるミッション、ビジョン、バリュー、スローガンをわかりやすい言葉でつくります。
最初にとりかかるのは、MIの中心となるミッションです。ミッションのあと、ビジョンまたはバリューにとりくみ、最後にスローガンをつくります。
MI(マインドアイデンティティ)の企業事例
消費者にブランドとして認知されている企業のMIの事例をみていきます。MIの例文としてご覧ください。
事例1 飲食店 スターバックス
元CEOであったハワード・シュルツは、地域にすむ人々の生活に寄り添うミラノのエスプレッソバーに感銘を受け、シアトルにコーヒーバーの文化を築きたいと考えていました。
スターバックスはコーヒーの商品を売るだけでなく、それ以上の価値を社会へと届けたいという信念のもと、ブランドとして認知されるようになりました。
ミッション
人々の心を豊かで活力あるものにするためにー
ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから
バリュー
私たちは、パートナー、コーヒー、お客様を中心とし、Valuesを日々体現します。
お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくります。
勇気をもって行動し、現状に満足せず、新しい方法を追い求めます。
スターバックスと私たちの成長のために。
誠実に向き合い、威厳と尊敬をもって心を通わせる、
その瞬間を大切にします。
一人ひとりが全力を尽くし、最後まで結果に責任を持ちます。
(参考URL:https://www.starbucks.co.jp/company/mission.html)
ビジョン/スローガン
非公表
ビジョンは組織の展望、スローガンは企業の合い言葉であり、自社の目指す具体的な将来像を社内で共有することを主な目的とするため、社外に公表しないケースが多くあります。またビジョンとスローガンは組織の将来的な構想や展望をつたえる役割をはたすため、企業によってはミッションやバリューに焦点をあてて作成し、MIの4つの構成要素すべてを明確につくりわけないこともあります。
事例2 アパレル ユニクロ(ファーストリテイリング)
ユニクロやGUなどのブランドを傘下にもつファーストリテイリングの柳井代表取締役会長兼社長は、HPのトップメッセージで「社会にとって必要な企業であること、サステナブル(持続可能)な社会に貢献できること、それらが重要なのです。」と語っています。
(参考URL:https://www.fastretailing.com/jp/about/message/)
服を通して社会に貢献する企業であることをMIで示しています。
ステートメント
服を変え、常識を変え、世界を変えていく
ファーストリテイリングのミッション
ファーストリテイリンググループはー
本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します
独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します
私たちの価値観
お客様の立場に立脚
革新と挑戦
個の尊重、社会と個人の成長
正しさへのこだわり
(参考URL:https://www.fastretailing.com/jp/about/frway/)
ビジョン/スローガン
非公表
事例3 メーカー NIKE
NIKEの創業者であるフィル・ナイトが日本のオニツカの品質と価格に感銘をうけ、オニツカのシューズをアメリカで販売しはじめ、徐々に製品開発に携わったことからNIKEの物語ははじまります。その後、ワッフルソールやエアなどでスポーツシューズの業界に技術革新をもたらし、プロからアマチュアまで多くのアスリートを多方面においてサポートし続けています。
NIKEは世界がNIKEのコミュニティであり、スポーツの力が世界を動かすと考えています。それらをすべて集約したNIKEのミッションがこちらです。
ミッション
BRING INSPIRATION AND INNOVATION TO EVERY ATHLETE* IN THE WORLD
*IF YOU HAVE A BODY, YOU ARE AN ATHLETE.
「世界中のすべてのアスリート*にインスピレーションとイノベーションをもたらすこと」
*身体さえあれば誰もがアスリートである
(参考URL:https://about.nike.com/)
ビジョン/バリュー/スローガン
非公表
まとめ
MIは、ブランディングはもちろん、会社の軸となる企業理念やビジョンをわかりやすい言葉で表現したものです。企業にとっても社員にとっても、企業活動をはじめる「スタートポイント」となり、迷ったときには「道しるべ」としての役割を担います。
的確でわかりやすいMIは、自社がブランドとしてマーケットに認知されるための第一歩になります。顧客に信頼できる企業であることを伝え、社会に一貫性のあるメッセージを送り続けることができます。
MIがぼんやりとしている、まだ取りかかっていないという企業様はぜひこの機会につくることを検討されてみてください。MIのある企業様は、改めて会社の「心・精神」を象徴するものであるか見直しをしてみてはいかがでしょうか。
もしきちんとしたMIを作る自信が薄かったり、完成度の高いMIを策定したい場合はブランディング会社にご依頼ください。CIRCLでは企業戦略やブランディング全体のなかでのMIをご提案し、MIからブランディングへの道筋づくりをご支援いたします。